貢物のおはなし

kentadon2007-11-13

  貢物のおはなし  
 
  ぼくとわが家族は、10月半ばぐらいからたいへん幸せな日々を過ごしているのであります。それはなんとも嬉しいことで、とにかく4・5日おきにですよ、連続してご近所 からイロイロなものをいただいていたのです。
 いえね、なにもぼくが地域での人望がとても厚く、普段から人助けに精を出している・・・なんてなことは絶対ないので、たぶん美人のカミさんや、やはり美人の娘たちが、アッチコッチでにこやかな笑みを振りまいているからに違いない。なーんて勝手な解釈をしたのですがね。

 でもなぜ美人とはいえ娘やカミさんが笑みを振りまくだけで、アッチコッチから貢物があるのかはわかりません。ひょっとしたら我が家の賢くて頼もしくてお利口で時々しか人を噛まないケンタクンが、やはり愛想を振りまいて ですよ、無愛想なぼくと散歩をしているのをご近所が見かけ、やはり時々でも噛まれるとイタイので貢物をしているのかもしれません 。ソッチの方が当たりかな。たぶん。

 とにかく報告をしますが、なんと柿を全部で50個ぐらい3軒から、それから甘いザクロをたくさん、さらに山梨から送られてきたといって近所の古老が持ってきたなんか甘いもの、はたまたお花を作っている農家から 、コスモスの束を「これどうぞ」なーんて言いながらケンタクンを意識して渡してくれるのですからもうたいへん。

 こうなると、もらうことが当たり前になるのがなんとも恐ろしい。あのね、このあいだなんか、普段からお花をいじったり盆栽みたいなものにハサミをいれている町内会長が、なんと珍しく脚立に乗り、庭木の一つになっている柚子を 、よたよたしながらとっていたのです。

 それをみたぼくは、持てる知能を全部働かせてとっさに考えましたね。偏り脳みそでも悪知恵はキチンと働くのが不思議です。ここはひとつ、何が何でも正月用の柚子を、はかりごとをしてでも手に入れなければいけないとね。

 うまくもっと柚子をゲットできれば、美人のカミさんや美人の娘にほめてもらえるとね。お利口で時々しか人を噛まないケンタクンにも、少しは喜んでもらえるとね。ガハハハ。

 であるのでぼくは、普段から声をかけたことも無いのに、精一杯の笑みを顔満面に浮かべ「お気をつけて」なーんて声をかけてしまうのですね。優しくね。

 すると、なんと、町内会長でもあり花咲じいさんでもあり、もと某政党の活動家で、一時期若い自分は地下にもぐったこともあり、いまでも時折見せる眼光鋭いその視線は、なんとも暗い過去を想像させるに十分な・・・えとなんの話だっけ。

 とにかく町内会長でたまに花咲じいさんでもあるところの柚子親父が、これ持っていきなと柚子を2個くれたのです。眼光はそれほど鋭くなく、それでも手に持っているハサミが揺れているのがすこし恐ろしかったのですが、ぼくはやさしい目で「ありがとうとうございます」言いながら、あと3個ぐらいくれてもいいのになどと、もちろん心の中で思ったのでした。

 最近はそんなんで、散歩 の最中は上ばかり見ています。知ってる家に柿などがなっていると、誰かが出てこないかとその家の前を2・3回行ったりきたりしてしまいます。

 ご近所もなんですよね、強面の親父と強面のドウモウ犬にうろつかれてはたまりませんから。そんなんで我慢できず、出てきて、早くあっちに行ってねとばかりに袋に入れた柿をくれる人も・・・そんな人はいやしません。 

 この秋、おかげさまでぼくは柿はたんと食べました。柿だけは秋の食べ物のようです。柿はやはり秋のものですよね。ぼくは春先 なんかに柿を食べたいとは思いません。

 昔はきゅうりもナスもトマトも、ぜーんぶ季節の香りがしたものです。