なんでもない風景

kentadon2007-11-16


 [[]]ぼく自身、とても奇妙に感じています。なんでもない時間、なんでもない場所、そしてなんでもない風景に、はっとすることがあるのです。はじめてきた場所なのに、はじめてみる風景なのに、それもなんだか唐突に感じるのです。みなさんにはそんな経験がありませんか。

 そんなとき迷わずぼくは車を止めます。なんでもない場所にね。そしてなんでもな風景を眺めます。ポワンとした感じで眺め続けるのです。でね、そんなにながい時間は無理なんだけど心の中の何かが・・・ちょっと説明がむずかしいな。とにかく何かの返事が来るのを待つのです。

 そんな場所はたいてい街の郊外です。突然出くわします。たいてい人通りの少ない静かな場所ですよ。またたいてい人の姿が少なく感じるのです。雑踏ではあまり感じませんね。街中でも感じません。

 でもね、あとでキチンとスケッチしようと、いつも持って歩いているデジカメで写真を撮るのだけど、帰ってファイルを取り込んでながめていると、アラッて感じで人が歩いていたりするのです。奇妙ですよね。

 その場所は奇妙に静かでした。でも動物の気配は感じます。あのね、たいていは犬だの猫だのが景色のどこかにいるのです。そんな気がするのです。でもただ感じているだけなのかもかもしれません。ぼくはじっと見続けます。

 風景が光景と変化し、何かが感じ始められたとき、ぼくはザワザワしたものを心の中で意識します。それは決して形となって理解できず、映像になることもなく、ほんのちょっとの期待でもあるささやきも無理です。しいて言えばなんともいえない切なさが漂っています。

 例のごとく突然ですが、ぼくらが理解している世界は、とてつもなく大きなことを言うと経験の知と考えています。それらは創造ではなくただの経験です。そしてぼく個人にとっての経験は総和となり、いつも合計よりはるかに膨らみます。とんでもなくね。

 そんなふくらみがぼくにささやきます。 もちろん声は聞こえませんよ。ただ心の中の奥の方で「世の中のことを理解するなんて決して思うなよ。世の中のことを理解したなんて決して思うなよ」ってね。いつもおんなじことを繰り返すのです。

 ほんとにそんなに長い時間ではないのですよ。ちょっとした空気のゆれとザワザワ感が消え始めると、光景がただの風景になり、ぼくはだんだん覚醒します。経験知で眺める先はミルキィブルーの空と住宅街。建物はちょっと黒ずんでいました。

 はっとする風景はね、ぼくは経験の外にあるものと理解しています。だから閉じ込めたりなんかぜったいにしません。できないのです。

 きっと、またいつかどこかで、違う風景で出くわすでしょう。