落ち葉のなか

 ホームセンターからの帰りにちょっと寄り道をしました。それでね、ちょっと思ったのだけど、みなさんご存知でしょうかね、埼玉の所沢から川越にかけては、かなり大規模な畑や雑木林が、ずいぶんと残っていることを。

 地元の人は雑木林をね、「やま」と呼ぶのですよ。でね、この地域に少しでも住まうと、その「やま」がなんとなく理解できます。なんとなくね。

 もちろんこのあたりの雑木林は、群馬や茨城や長野といった、関東でももう少し奥に入った地域のそれとは違ってね、雑木林「やま」は平坦地です。それでも「やま」なのです。だからいわゆる里山とはちょっと違うんだな。

 ぼくはいつもの場所に車を止めました。外に出る前に「やま」をガラス過ごしにのぞき、思うような状況であるかを確認して、そして外へ出ました。やまの地面はすべて、すべて金茶色に染まっています。フサフサの地面は、ちょっと大げさだけど、思いっきり転んでも痛くないようです。

 ちょっと白状しますが、ぼくはいがいと虫が苦手なのです。「やま」で唯一虫が少ない季節が、というより虫に遭遇することが唯一少ない季節が、これから2月ごろまでのあいだなのです。だから寝転んでも大丈夫なのであります。そう勝手に思っています。

 しばらく足の感触を楽しみ、黄金の色合いを楽しみ、そして静寂を楽しみました。

 「やま」の向こう側まで足を進めると、「やま」脇に新しくできた道路には。「キオツケー・右へナラーーイ」といった感じで、銀杏並木の植栽が続いていましたね。

 道路は片側2車線最新都市型歩道付き道路です。そして通る車は洗車したてのピカピカ車、最近はなんだかピカピカ車が多いなぁ、気のせいかなぁ。土曜日だからかなぁ。

 とにかくすぐさまぼくは回れ右をしましたよ。いま見た映像・音声・振動などなど、とにかくすべてを振り払うように、手をバタバタさせ、首を振りました。そして最初はゆっくりと先ほどの金色静寂フサフサ道を、途中からは少し跳ねるように、はじけるように、人目を気にしながら戻りました。

 ほんの少しの時間なのに、ワイパーには落ち葉かつもりトラックの荷台には枯葉の毛布が敷かれていました。