オジジと落ち葉

 

 北風ビュービューの本格的な冬は、まだ当分やってきそうもないようです。であるので対策をキチンと立てる余裕がありますね。

 なーんて一人前の大人がくっちゃべりそうなことを、近所のオババ達がくっちゃべっていました。まあ姿格好は一人前の大人なんですがね。でもねぇ、これがねぇ、近所でも評判の拡声器オババ達なのです。

 なにが拡声器かというとね、とにかくイロイロ、あることないこと、ないことあることをふれまわる御仁たちなのです。けっして一人前のキチンとした大人のすることではないのであります。

 オババ達の横を通りながら、ぼくはいまにもビュービュー言いそうな腹を手で摩りながら、「早く飯が食いたい。飯、飯、飯」と、本来なら小声で聞こえないようにブツブツ言うべきなのでしょうが、ぼくはそれほど他のことを気にしないので、それほど空気を読めないので、やはりそれほどキチンとしていないので、大きな声でつぶやきました。

 オババ達は、生意気にも、ぼくの声を無視し、さらに大きな声で本格的な冬に関するお話をされているので、ぼくは得意技の一つである「自由自在オナラ」を、その特大のやつを、バキッと引っ掛けてやりましたよ。

 えとここだけの話ですがね、この特大のオナラ引っ掛けは、注意しないと、ある程度オナラ引っ掛けに習熟しないと、たいへん危険なのです。なぜなら不用意に未熟者が、それを免許なしでおこなうと、実も飛び出るのですから・・・

 もしこれを読みながら食後のカレーパンでも食べている人がいたらゴメンナサイ。意図した表記ではありません。

 とにかく、さすがに大音響のそれを、耳の真ん中で捕らえたであろうオババ達は、一瞬北風ビュービュー関連の天気予報話を止めましたね。でもってそんなことが現実社会であってはならないことだとばかしに、きょとんとしてましたよ。

 ぼくは大分気持ちよくなったので、ランランランとスキップしながら我が家の門扉を開けました。

 さてさてオババ達はどうでもよく、ちょっと気になったオジジの話をしましょう。今日は朝から、越谷と春日部の境目あたりで仕事をしていました。お昼は近所の公園で、コンビニで買った焼肉弁当(390円・630カロリー)です。

 食べおわり、消化のために血液の93%が胃腸関係に出動しているため、あるいは基本的にいつも頭に血液がないためかボーーとしていると、奇妙な光景を目にすることに。

 銀杏の木の下、オジジが一生懸命落ち葉の掃除をしていました。まぁ落ち葉の掃除は別に奇妙でもなんでもありません。そこいらは血液の93%が銀杏関係・・・違った胃腸関係に出動していようと、いつも頭に血液がなかろうと、かろうじて判断できます。

 奇妙なのはね、風が少しふいているためにね、オジジが竹ボウキで掃くそばから、すぐさまおんなじくらいの落ち葉が落っこちてくるため、おんなじことを延々とやり続けていることです。きりがないのです。

 でね、しばらく見ているうちに、ぼくはいま奇妙と言ったことを撤回し、大いに反省すべきだと考えるようになりました。えとね、このオジジはね、たぶん落ち葉を掃き集めてきれいにすることがその第一目標ではないのです。ぼくはそのことに気がついたのです。

 オジジには竹ボウキで掃く行為そのものが、大事で、意味があって、生きがいで。人生なのではないかとね。そうぼくは少ない血液頭で思ったのであります。

 悪ガキが、それでもある程度掃き集めて山になっている落ち葉を蹴散らして駆け抜けようが、近所のオババが離した子犬がオシッコをそれにしようが、オジジは悠然とホウキを操っていました。

 ぼくはだんだん嬉しくなり、そしだんだん悲しくなりました。

 なぜかは血液が胃腸関係に出動しているのでうまく言い表すことができません。でもなぜか、オババ達がしゃくにさわりました。これも血液がたりないためなんでしょうかね。

[rakuten:fbird:10001061:detail]