クレーマークレーマー

 クレーマークレーマーって何だ?って思われる方がほとんどでしょうかね。映画じゃありませんよ。ちょっと説明が要りますね。えとぼくは、たいてい日々違うお宅へ伺うのです。そんでもって住宅のアレコレを修理したり、新規に取り付けたり、チェックしたり、作動の確認をしたりしています。

 そんなんでイロイロな人に出会います。でね、ときどきとんでもなく厄介な人に出くわすことがあるのですね。今日もそんな一日でしたよ。

 今日の仕事は東京近郊のA市です。さいきん特に都市化が進んでいる街です。ちょっと余談ですが、今日は土曜日です。なのでふだんと車の流れが違うのですね。ぜんぜん違いますよ。特にぼくみたいに高速を重宝に利用するものにとって、週末の、この車の移動コースの選択はたいへん重要なのです。

 ちょっと間違えたもんにゃね、あーたもうたいへんっすよ。とにかく1時間程度は有料高速道路の上で、じっと遠くのお空を眺めていることになりますね。間違いなく。

 さて、そんな辛い経験を過去になんども繰り返し繰り返し経験しているぼくは、ほとんど学習能力がないぼくは、さいきんやっと無意識に肉体がその危険地域を回避してくれるようにようやくなりました。やっと我が家の飼い犬なみになったのです。喜ばしいことです。

 きょうも気がつくと朝6時に我が家の駐車場を出発していました。これで早朝の、週末家族でお出かけ隊連中の、その洪水のような混雑はひとまず回避です。

 おっと、大事なことをお話していませんで。じつはね、ぼくは昔っから本が大好きです。キチンとした社会人である皆さんが一生懸命お勉強をしていたころ、ぼくは違う場所で違うお勉強などをしていました。

 そんでもってキチンとした学問を見逃していたわけですが、それでも本はいつもそばに置いてあった・・・正確に言うと、いつもそばに置いておきたかったのです。それぐらい本好きです。いま自由に好きな本を好きなだけ(ちょっと限度がありますけどね)読める環境は。正直天国です。

 でね、たいていは仕事用のバッグに新書やら文庫やらイロイロが入っています。だから目的地近くの公園や道路が広くなっていて、車をある程度駐車できそうなところで止めます。なにせたいていはバカ早く出かけるので速く着きますからね。
 
 そこで約束の時間までが読書時間となるわけです。まあ今日もそんなことで、目的のお宅の呼び鈴を押すまではけっこう良い時間が過ごせたわけです。しかーしそれからがいけませんね。なにせ極悪クレーマーに本日はぶち当たっちまったのですから。

 ぼく 「○○からガラスの交換で伺いました。○○代行の深津です」

 クレ 「あぁ、どうぞ、それからガラスって枠も交換するんでしょ」

 ぼく 「いえ、えとガラスだけです。枠は前回交換してるとのことですが」

 クレ 「あのさぁ、どーしてお宅らはいつも中途半端なの」

 クレ 「もちろんガラスに不具合があるからぁ、メーカー呼んで交換の手続きをさせたんだけどぉ」

 クレ 「ふつうさぁ、そおいうときはさぁ、枠も新しくすんじゃないの」
 
 ぼく 「枠にはなにも不具合がないことはお客様もご承知であると・・・」

 クレ 「だからさぁ、気持ちの問題よね。でね、こんな庭先で交換してね、不具合でたらどーすんの」

 てな会話が延々と続き、もっと続くとぼくは若いころのあまり規制がきかないぼくになってしまいそうであったので、とにかく身を引きました。とにかく先方の希望は、何が何でもガラスを枠ともどもすっかり新しいピッカピッカなものにしろということのようです。まるでアホバカです。新入生じゃああるまいしね。

 ぼくにこの仕事のお鉢が回ってきた訳がやっと理解しましたよ。なにせね、いままで対応していた業者が、急に行けなくなったとので、急遽ぼくに連絡があったのです。

 なんでいけなくなったのと聞くと、なにやら担当者しどろもどろでしたから。

 担当者に連絡をしてことのしだいを話すと、なんとこのクレーマー、この7年間毎月のようにあれこれと難癖をつけてはハウスメーカーの担当者を呼び出しているとのことです。

 ぼくは言いましたね。もうすこし情報を事前に教えてくださいとね。そうじゃないととんでもないことになる場合もあるからです。ぼくはそれほど寛容ではないのです。脱ぐと凄いのです。関係ないか。

 とにかくこの手の人は顔がだいたいゆがんでますね。あっ、いま鏡を見ようとしているアナタ、アナタは大丈夫ですから。心配しないで、ご休心ください。

 あくまで東京近郊西方面のA市に住む、40代中ごろで中肉中背で、すこし下っ腹が出ていて、頭もだいぶ寂しくなっていて、トヨタのワゴンに乗っていて・・・こんくらいなら特定できないだろう。でもって訴えられないだろうな。

 とにかくそんなクレーマー野郎のことですからね。

 気持ちよく読んでいた本の内容はすっかりどっかに飛んでいきました。だから帰ってもう一度読みなおそうとしっかり思ったのでした。チャンチャン。