生ハムが好きです
ぼくは生ハムが好きです。
大晦日のこの時間に生ハムなどという話題がふさわしいかどうかは、まるで考えずに、無心でキーボードをたたいているのです。少しばかり俯いてね。
あしたからしばらく、しばらくといっても4・5日だけど、我が家はおせち料理となります。そんでもって4日までは、ぼくが得意ではないお客があるそうです。
正月は、いい加減に、キチンとした身なりで客を迎え、そうして清く正しく年初の誓いをたて、迎える一年を幸先良いものとしなさいと、カミさんが言います。
ぼくはだまって、空を見あげ、「あっ」とか言って飛んでいる鳥を指差し、それから敬礼をしました。アホみたいですがいいのです。それほど利口ではないんでね。でも、なんともきょうはいい天気でしたね。
客はすべてカミさんの関係です。某研究所のポスドクとか、某○○の○○とか・・・こんな風にしか書けないんだったら書かなきゃいいんだね。とにかくカミさんは人気があります。それでもカミさんに言わせると少なくなったそうです。
ある年、ぼくがいつものバリカンで、正月を正しく迎えるために頭を整えていたら、キチンと刃先をセットしてなかったらしく、刃先がはずれ、ぼくの頭の右即頭部が、まるでコンバインが通ったあとのように4センチ幅の通路ができてしまったのです。
ぼくはどうしようかと、ほんとに狼狽をしましたよ。なにせ翌日は元旦なのに、頭の右即東部がコンバインなのですからね。でもって必死に考えて、それなら左即頭部にも同じようにコンバインで通路を通せば、左右の均衡がとれるのではないかとの結論を得ました。ぼくもたまにはキチンと考えるのです
でもって正月2日の客を前に、まるでエイトマンのような頭を見せ、叩き、ヘラヘラ笑いながら
「エートマーン・エートマーーーン・エイト・エイト・エイトエイトエイト」と歌って見せたら、その客は早々に退散し2度と我が家の敷居をまたぐことはありませんでした。バンザイです。
それからはバリカンの腕も上達し、さいきんはめったなことではコンバインになりませんね。
さてさて、とにかく明日はお正月、お正月用の生ハムを見っけたので、大好きなので、なんとか食べてやろうと考えました。
とにかく見つかると怒られるので、カミさんの目を盗んで冷蔵庫から2枚引き抜きましたよ。食パンをオーブンで少し焦げ目がつくくらいに焼き、すばやく生ハムをのせて食べようとしたら、間が悪いことにカミさんがやってきました。
ぼくはとっさに洗い物の後ろパンを隠しましたよ。「なんか食べてんの」といぶかるカミさんに「えとパンをちょっとお腹がすいたのでね、エヘラエヘラ」などと薄笑いを浮かべ、生ハムだけはバレないようにと必死です。
やっとこカミさんが向こうへいったので、洗い物の後ろから焦げたパンを取り出し、意気揚々と食べようとしたのですが・・・
焦げたパンにはさんであったぼくの大好きな輝く生ハムは、なんと普通のハムになっていました。熱い焦げたパンに長い間はさんでおいたからでしょうね。うんと悲しかったです。ぼくは生ハムが好きななのですあら。
除夜の鐘が鳴り始めました。