ただいま増殖中

 テレビコマーシャルのなかで、最近うんと楽しいのがタイトルにある「ただいま増殖中」ってやつだな。

 あんなふうにいろんなものに変化できたり、あるいはアッチコッチスパイダーマンみたいに飛び移れたりできたら、どんなに愉快か、考えるだけでもワクワクしちゃうね。

 じっさいは、この先100年後の世界でも、そのようなことはたぶん難しく、というよりできないだろうね。まぁでもそこいらは夢だからね。まるっきしできませんと強弁するのも大人気ないかもしれないね。まあまあそこいらの夢がいくら増殖しようと、ぼくはぜんぜんかまいません。

 ところがね、昨今、ぼくのまわりでは、なんとも不愉快な人間が増殖中なのです。

 まず仕事関係、これがね、いわゆるメジャーなハウスメーカーで建てた家ほど、その手の不愉快人間が多いのです。もちろん意図的な部分もあります。つまり大手のハウスメーカーなら、ある程度のゴネ得が、やり方によってはまかり通るからです。

 たいていの大手ハウスメーカーには、ゆわゆる顧客相談室あるいはお客様相談室なる部署があります。そこはメンテナンスの依頼場所であると同時に、苦情受付の窓口でもあります。

 今日の客は後者の依頼でしかも典型的なクレーマでした。建築後16年も経つ住宅なのにですよ。ぼくが現場について時には、その家のアッチコッチを複数の業者で作業が始まっていましたね。驚いたのは、部屋のクロスの張替え・網戸ネットの交換・建てつけ調整・部品交換・ガラス交換等々すべて無料でやらしていることでした。

 この家の主人は教員です。でもって建築後16年の建物です。もちろん建物の基幹部分はそれなりの保証がありますよ。住んでいて柱が折れて屋根が下がってきたなどといった、基本的な構造物の瑕疵はとうぜん一定年度保証されます。

 ただね、16年も住んでいてだよ、「壁紙にシミが浮き出てきたから全部張り替えろ」なんていうクレームをつける人は、それこそなかなか見当たりませんね。網戸のネットが破れたと称して、じっさいは指で押さえたかどうかでネットの端が外れているのを、これは施工ミスだと言い張ってすべて交換させる。

 ガラスを傷があるからといって、やはり交換、サッシの動きが悪いのは、障子の建てつけ調整が悪いからだとすべて再調整等々、とにかくぼくに言わせれば「建て直したら」っていいたくなるような人でした。

 でね、程度問題で上記のような人はそれほど多くないのだけど、この数年は、この手のクレーマーがなんだかやたら増えているようなんです。増殖中です。ぼくは毎日メンテナンスでユーザーと接しているので、ある意味敏感に変化が感じられるのです。

 とにかく自分本位です。昨日のテーマではないけどね、オノレの世界に没頭するのはたいへんけっこう。ただしそれは、他人に迷惑を及ばさないという条件付ですよね。

 この手の連中は一切他人のことは考えません。

 さてと、明日は世田谷の深沢へ向います。