吾亦紅

           


 いい年してぇ・・・なーんて笑われることがけっこうあるけど、ぼくはやはり、いい年だけどいい大人にはなかなかなりきれないのであります。

 いえね、けっしてそのことを自慢しているわけではないのですよ。ただ、ただそんな自分が好きなのです。

 それはそうとこの2日間はけっこうな雨でしたね。雨はいろんなものを流してくれるけど、かたっぽでは地を固めてくれます。

 だからそんときそんときの都合で、たとえ雨が少しぐらい振り続こうと、そこいらを呪うようなことはやめなければいけません。うんと日照りでちっとも雨が降らなければ、それはそれで困るからね。

 昨年の暮れからぼくはいろんなものを流してしまったけど、いろんなものを失くしてしまったけど、それでもそれは量で計るもんではないことに気づきました。いまさらだけどね。

 たくさんのものを失っても、なくしても、ぼくは道端のアスファルトの隙間に一生懸命咲いているタンポポが一輪あれば、差し引きゼロにできますよ。そういう風に考えることにしてるんだね。

 野原いっぱいに咲いているタンポポよりも、そんなタンポポが好きだな。





 電話が鳴る

 妹はいつも何かを伝えてくる

 電話

 その何かがわかるのはぼくの能力

 電話

 いつも何かを運んでくる

 電話

 運ばないでほしいものもあるのに

          深津 勝