ノスタルジー

 
             
      

 郷愁なんてものは、郷愁なんてものはぼくにはない。そう言い聞かせています。少しばかり無理やりだけどね。でも、たとえあったとしてもそれはとんでもなく不必要なものです。ぼくにはね。


 もちろん風景はべつです。風景とは情景です。情景にはぼくのよい記憶しかないからです。ほんとに都合よくできていてね、じっさいは脳味噌のDドライブにセクト分けしてあるかも知れないけど、でもぼくのお利口プログラムは、そいつらを自動ではずしてくれるのです。いやな記憶をね。


 いままでも、たぶんこれからもぼくは前を向くことしかできないでしょう。少しオーバーだけど、それは生きる前提なのです。


 それほど思い出を捨て去る理由をね、こぼれるほど、溢れるほど、ぼくはたくさん持っています。それだけはオーバーではありません。


 でもね、ちょっと考え方を変えれば、それはそれでけっこういいことかもしれませんよ。


 「俺たちの昔はよかった、昔の人は親切だった、昔は会話があった、昔は優しかった」なんてくそ食らえです。昔なんか絶対に帰ってきません。思い出を捨てる理由が大きければ大きいほど、前を向く気持ちも大きくなるでしょ。違うかなぁ。


 だからさ、みんなもね、ぼくと同じようにプログラムを組みなおすべきです。方法は?


 うーーん、むずかしいなぁ・・・ こんど考えます。

 


 
 




 いつかはぼくの時代がやってくると思っている

 ぼくの時代はぼくだけのもの

 どうか答えをはやくだしてほしい

 ぼくだけの時代の正解をね

 今日も思っている きのうも明日も

 すぐそこにぼくの時代がたたずんでいることを

 どうか遠慮しないで どうか早くきてほしい

              深津 勝