時
住まいの近くに野火止用水が流れています。その昔(江戸時代初期)に、老中でもあった松平伊豆守信綱によって玉川上水から分水して引きこまれた用水です。
もう少し細かく説明すると、現在の東京都小平市から平林寺(松平家の菩提寺)を経て、埼玉・志木市の新河岸川に至る用水なのです。その時代は生活用水でもあり農業用水でもありました。
でもねぇ、ぼくがこの地に越してきた当時はドブネズミの巣でしたよね。それでもいまは整備がなされて、一部暗渠になったりしましたけど、鯉のすむ清流・・・とまではなかなか言えないけど、それでもきれいになりました。
でね、なんだかいつもアッチコッチで何かをじっと見続けているようで恥ずかしいんだけど、きょうも散歩がてらじっと、その用水を、流れを見続けていました。ケンタクンに先を促されるまでね。
まるでおかしなおじさんです。でもじっさいおかしなおじさんには違いないので、なので、そう思われても気にはなりません。ぼくはね、留まることのない川の流れや、焚き火の炎、浜辺の打ち寄せる波、そして一片の雪景色など、とにかくそういった景色を見続けるのが好きです。
見た目には変化のない、変化の少ない、留まった景色がすきなのです。でもほんとは違うのでね、それはうんと時を感じさせるのです。ぼくにはね。
そんなときなにを考えているかわかりますか。たいていはね、小さいころのことを思い出しているのです。でもってたいていはね、それらに音楽がくっついて流れています。それからなぜか気が立っています。まぁ、気が立っているのはいつもですけどね。
だから野火止用水の近くにお住まいの方々、そんなおじさんや獰猛犬を見かけたら、決してに声をかけたりしないでくださいね。決してテープを投げたりおひねりを投げたりしないでくださいね、たぶん噛み付きます。
時
どうしたって止められない
だったらいっそのことのっちまいな
のっちまえばしめたもんさ
しっかりとつかまってしっかりとひっついて
特急券は買わないほうがいいな
普通車が一番だよ
なぜって・・・
きっと大きくなればわかるさ
深津 勝