流す涙

       
          


 ほんとに偶然なんだけど、ぼくはあることを目撃しました。目撃なんて言うと、ちょっとおかしな感じになるかもしれないな。あのね、ふとしたひょうしで、流す涙をみてしまったのです。女の人のね。


知らない人です。でも、それでもぼくは動揺しました。ひどくね。なんでこんなにぼくは涙に弱いのだろうか・・・ぼくだけなのだろうか。ちょっと考え込みました。


さんざん他人を泣かしてきたのに・・・なーんて、一部の、ぼくをよく知っている人々は、指を刺して非難するかもしれません。それでもぼくは胸をはります。


なぜだかわかりますか。あのね、たとえ相手が涙を流し、うつむいて悲しんでいたとしても、ぼくはけっして、相手を傷つけるような行為をしたとは思わないからです。思っていないのです。


ぼくは他人を泣かせたとしても、うつむかせたとしても、ぼくはそのとき、その相手以上の痛みを、傷を感じ、それを全身で受け止めました。でもそれらは、たぶん言い訳に聞こえるのでしょうね。でも真実です。


彼女は泣きながら、うつむきながらも美しかった。それはやはり性の差で、ぼくら男にはないものでしょうね。あのさぁ、男はみんな涙に弱いってほんとうかなぁ。量ることができるのならば方法をおしえてほしい。


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自動詞


I don’t cry

I don’t cry for her

目的がなければいけないの

それだけで簡潔したいのに

なんで寄りかかるの

ぼくはいつまでも無頼でいたい

 
         深津 勝