夏が来る前に

   夏が来る前に

季節の境目にお願いがある。もしですよ、もし季節にキチンと境目があるのなら、ぼくは断然お願いをしたいのです。大事なお願いをね。


少しばかりぼくには衝撃でした。あのね、いまさらという感じもあるけど、ぼくにはキチンとした、そう自分の思いを伝える言葉が、なんだかとても少ないことに気がついたのです。ほんとにいまさらだね。


キチンと思いを伝えることが、これほどヤッカイでたいへんなことである事を、ぼくはずいぶんとウッカリ忘れていました。というか気がつきませんでした。そのうえぼくには、そこいらのボキャブラリーが惨めなほど少ないのです。致命的にね。


うんん・・まてよ、この「ボキャブラリー」って言葉についても、ほんとはもっとキチンと伝えなくてはいけないのだろうな。ちゃんとした大人の回答は、皆さんがご自分で広辞苑でも引いてもらえばいいのだけど・・・要するにね、それは自分が使える単語のことでね。その総体をそう称しているんだね。そう思います。


さてと、いまぼくの大好きなケンタクン(飼い犬)がぼくを見つめています。こいつはいつもカッコイイのです。ぼくの目標です。


彼は今年10歳になりました。人間の年齢で言うと70歳ぐらいの見当ですかね。でもぼくには3歳や5歳や7歳のころの彼と、今の彼との違いがよくわかりません。ちっともわかりません。わかりたいとも思いませんね。


でね、ぼくは彼に「キミを家族同様とっても大事に思っているよ」と言うことを、ある日とつぜん、とっても切実に伝えたくなったのです。突然なので理由はよくわかりません。


さてと、問題はここから始まります。ぼくのこの偏向したウスラ脳みその奥の方に、なんともほんのカスカにだけど、とにかくそこにある「カス記憶」では・・・違うなぁ、とにかくその「カスカ記憶」では、なんだかいつも毎年、この時期に同じように「切実」に思っていることを。やはり突然思い出したのです。とにかくいつもなんでも突然です。


だけど、しかし、なんともしょうがないことですが、犬に限りなく近い人間のぼくと、人間に限りなく近い犬の彼とでは、やはりコミュニケーション手段が限られております。それでも双方限りなく近いので、ある程度意思の疎通は可能なのです。


しかしねぇ、やはりボキャブラリーの少なさが・・・


えーとですね、ここで申し上げておきます。「人間と犬とのあいだに通用するボキャブラリーなんぞあるわけがない」と怒って、ご自身の机をバンバン叩いているアナタ、アナタはさっさと退場してください。とにかくこのオッサンの乱れ書きでは、犬と人間との境はそれほどないのですから。そういう世界なのですから。


さてと、言いたいことを言ってまた読者の半分を失ってしまったわけですが、そこいらは気にしません。いろんなことを気にしていたら、犬と話しながら散歩なんぞできません。雑木林でケンタクンと連れションなんかできません。ズボンの後ろがふくらむぐらいの大きなオナラを人前でできません。


恥ずかしくて「できません」をいっぱい持っていて、それらを平気でおこなうことを気にせず生きていると、年をとらないようですよ。ぼくなんかいつも10歳ぐらい若く見られています。だからほんとうは30歳と336ヶ月なんだけど、まわりからは30歳と240ヶ月ぐらいに思われています。

めんどくせえなぁ・・・と思われて渋々計算をされているアナタ。アナタはエライ!


さてと、とにかく毎年おんなじことを思ったり悩んだりすることは、なんだかとっても面倒だなと思います。だからね、季節の変わり目あたりを一手に引き受けていて、でもってそこいらの元締めをしている神様がおられたらね、ぜひとも変わり目の数日前に、そっとぼくに知らせてほしいのです。






 
夢で逢えたら



できれば闘いをやめたいな

音楽をともに楽しもうよ

もっと優しく話せるはずだよね

手をつないだって恥ずかしくない

キミと普通に生きていけるとおもう

だからもっと感謝したい