悪徳黒ガラス


        


   悪徳黒ガラス

「埼玉新座市の朝は早い」なーんか言いながら、コーヒーを片手にベランダでカッコつけていると、早くもカラスの早朝攻撃を受けそうになったので慌てて部屋に戻った。油断も空きもない。


どっちにしたってなんだな、「ニューヨークの朝は早い」なんていうナレーションをバックに、高層ビルの洒落た部屋からセントラル公園を眺めている絵とは、それこそ大違いで、まるっきりダサイ。まぁ比べるほうがイケナイのですがね。


そんなことはさておき、この時期の雨はなんだな、カラスと同様不機嫌で、やんだと思うとまたすぐにポツポツと落ちてくる。なんともすっきりしませんね。だからぼくはカッコつけの朝コーヒーを、そんなこともありさっさと切り上げたのです。

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しかーし、想像以上にこのカラス野郎どものしつこさはないね。普通じゃないな。なんてブツブツ言っていると、以前カミさんに言われたことを思い出した。


じつはね、白状すると、この1・2年で、何回かカラスに石を投げたことがあるのです。もちろん攻撃を受けたからですよ。カミさんが言うには、連中はそのことを覚えていて絶対に仕返ししているに違いないのだそうです。


とにかく覚えているのかいないのか、ぼくの顔を見ると「アウッ・アウッ・アウッ・アウッ」なんて鳴き声発しながら2・3匹が集まってきて、ぼくを威嚇します。


とにかく徒党を組んで目を吊り上げて(目の件はそのように感じるだけで、じっさいは最初から吊り上っているかもしれません)波状攻撃を仕掛けてきます。ぼくは防戦一方でだらしないのだけど、とにかくケンタクン(飼い犬の名前)が襲われるとかわいそうなので石を投げたのです。


「あのさぁ、悪徳黒ガラスなんてもう言わないからさぁ、ここいらで手を打とうよ」なんてね、このあいだから何度もそう呼びかけているのだけど、向こうは聞く耳もたずって感じですね。


恨みとか憎しみとか怒りといった、そっち方面はうんと知恵がまわるのでしょう。きっと。でもさぁ、ほかに覚えることはいくらでもありそうなのにねぇ。たとえばですよ。


■ たとえはゴミの袋から食い物を漁ることはイケナイこと

■ 朝っぱらから大きな声で騒ぐと近所迷惑

■ 巣の下を通る人間様にたいして無遠慮に攻撃をしかける

■ 排泄を人の家のベランダに落としていかない


などなど、とにかくぼくの顔はさっさと忘れていいからね、キチンと社会常識を身につけてほしいのですね。ほんとに。 なに、「オマエに言われたくない」・・・ ごもっとも。



 チックタック

 静寂は音の重なり
 そんな喧騒の中でだけ感じる
 音がなければ静寂などない
 風や雨や大地の虫が騒いでいても
 カラスが怒り叫んでも
 静寂は音の重なり
 とても静かだ

        深津 勝