冬がくる前に

                   


ここ数日、ぼくは東京をアッチコッチと徘徊しています。


ん、まてよ。「徘徊」っていうのは、ほんとうの意味は、正しいキチンとした使い方は・・・


てなことで調べてみました。まぁ、あちこちサイトを見てみましたが「どことなく歩き回ること」あたりが一番の正解みたいです。ということは、ぼくの場合仕事でウロついていたわけで、「徘徊」とはちょっと違うみたいです。


さて、とある一日、早朝ぼくは我が家を出て新宿へと向かいました。中野を過ぎ、新青梅街道から目白通りに入ります。時間が早いせいか、いつも混むと感じていたあたりでも、なんてことなくスイスイの道路でしたよ。明治通り沿いの都電の線路をわたり、鶴巻町の交差点を早稲田方面に入ると目的地まであとわずか。やはりスイスイでしたね。


 いつものように15分程度で仕事を片付けました。客はぼくに感謝の言葉を述べ、でもってやさしい笑顔でぼくを見送ってくれました。しかし賢いぼくは、送る客の目の奥にある「なんでたった15分の作業でこんな金額になるんだ!」という怒りの炎を見逃しません。けどそこいらは無視し、ぼくは精一杯の笑顔でオイトマの挨拶をしました。ヘヘ。


 さて次の目的地は田端です。江戸川橋から音羽通りを護国寺方面に、途中、左手に見えた講談社の社屋を横目に「もちっといい本を出せよ!」などとわけのわからないことを毒づき、返す刀でオナラをしました(返す刀の使い方がおかしいな。でもいいや)。


しかしながら車は密室ゆえ、とうぜんのこと呼吸困難が生じます。必死にもがいていると前の車にぶつかりそうになり、あわてて窓を開け深呼吸。あぶないあぶない。ん、なんの話だっけ?そうか、敵は田端だ!・・・ワケワカンナイ。 


さてと、気を取り直し護国寺を右に折れ、不忍通り(しのばずどおり)を大塚方面に向かいます。大塚4丁目の先にある得意先の前を、担当者に見つからないように(見積り依頼をほっぽってあるので)よこを向いて運転していたら、やはり前の車にぶつかりそうになりました。


きょうはあぶないことが多いな、これらはきっと祖先の悪業のせいか、親兄弟の素行の悪さか、あるいは暦に関係する我が家族のとんでもない特異日なのか等々、いろいろ理由を考えましたが・・・やはりキチンと考えると理由はぼく自身にあるのですね。はい、つまりアホなのです。


 なんとか無事得意先前を切り抜け、駕町の交差点を過ぎて上富士へ、この左奥にある六義園は、ぼくの小さい頃の遊び場でしたよ。もちろん入園料など払わず、裏からタダで出入りしていました。上富士交差点角の、中学時代の担任の家は・・・「オオッ、まだあるな。取り壊されていないな。生きてるな」とにかくまだ当時のまま。なんだかほっとしました。げんきかなぁ。


 動坂下を左に曲がり目的地に到着。客は神経質そうなオヤジです。仕事の前にオヤジの目の奥を確認しました。まだ炎メラメラはありませんね。当たり前か。どうすっかなぁ・・・チョッパヤで片付けられる案件だけどなぁ。


とりあえずなんだな、日に何度も炎メラメラの客目攻撃は避けたいな。心が痛むからな。てなことでしなくていいことを倍の時間をかけて行います。


そんでもってずっとぼくの作業を神経質そうな目で見ておるオヤジの気をそらすため、総選挙の時期は近いだの、中国経済の今後は厳しいだの、飼い犬は賢くデカイだの、カミサンは美人だけど最近イビキがうるさいだの、友人がここんとこハゲてきて、いつも帽子をかぶるようになった。てなことをしゃべりまくり時間を稼ぎました。40分ぐらいかけました。疲れました。フウ。


明日は元麻布へ行きます。鳥居坂下から入ったところです。冬がくる前に東京を走ります。