真夜中のカーボーイ


              


なんとなく夏日あったかな一日でした。皆さんはどうなのかなぁ、ぼくはね、やはり暖かいと気分も気持ちも精神も少し暖かくなります。そう感じます。そういえば湘南の方ではね、昨日は夏日になったなーんて言っていましたよ。


でもねぇ、まだ2月でしょ。だからやはりそれはおかしな気候なんだろうね。もっとも「おかしな」関係はぼくの得意とするところで、おかしな精神の持ち主でもあるぼくは、常日頃から「おかしな」ことには、積極的に関わりたいと・・・思っています。


きょうも暖いね。本来ならぼくは、午前中から相棒と散歩に行きたかったんだ。けどそうはいきません。カミさんの勤めている研究室の若い研究員が、昨晩から大勢で我が家に押しかけているからです。飲み食いした挙句にグッタリと、なんとまだこの時間(AM11:00)も、みーんなでお休み中なのです。しょうがないので大音量でオールディーズの曲をかけてやり、連中をたたき起こしました。フウ。


カミさんはさっさと用事で出かけてしまっています。ぼくは大勢の研究員にごはんとお味噌汁とお茶と・・・とにかく朝ご飯を食べさせ、薄着をしている彼には寒くはないかとストーブのスイッチを入れ、寝ぼけた顔をしている彼女には洗面所で顔を洗いなさいと背中を押し、ぼーっと遠くを見ている彼女には、論文を早くまとめ十分な睡眠をとるように指導・・・ オレいったいなにしてんだ。


ぼくはね、なんだか唐突だけど、ときどきとても優しくなります。自身進む道を探していた思春期に、あるいは道を見失い雑踏をさ迷い歩いた青春期に、ぼくはいつも羅針盤を求めていました。ありもしないそれをね。つまりぼくにとってはだいぶん甘えていた時代です。社会や環境にどっぷり甘えていたといえるでしょう。

ちっぽけな甘えさえ許されない社会を自覚できたとき、ぼくは優しくなりました。なんか可笑しいよね。


渋谷駅近くの明治通り沿い、全線座(字が違うかも知れません)という映画館がありました。今はもうありません。当時はアッチコッチでみられた1階が邦画、2階では洋画を上映している、そんなタイプの映画館です。1週間同じ映画を上映していましたよ。チケットはなんと150円。ぼくは週に2回は夜そこにいました。一人でね。


「真夜中のカウボーイ」そんな映画が、そこにも少し時期を外して廻ってきました。あまり内容は覚えていないのです。けどそんなに楽しい映画ではありませんでした。もちろん西部劇ではありません。都会の底辺で懸命に生きている若者の姿を、すこしばかり斜めに描いた映画であった気がします。


ぼくは気がつくと、見事に主人公の一人に自分を重ねていました。ドブネズミのような彼にね。たしか「リコ」と呼ばれていたと思います。俳優はダスティンホフマンでした。映画の最終局面、彼は自身の悲惨な現状を打破すべく、とにかく暖かなフロリダへ行こうと計画します。理由も理屈ありません。ただ暖かな場所へ行きたかったのです。


ぼくはいま、また人生の局面に直面しています。甘えが許されないことを自覚しているいま、暖かな場所はそう簡単にはみつからないでしょうね。でもぼくは暖かな場所へ行こうと計画をします。理屈抜きでね。