冬の一日・雨・そして晴れ


            



       冬の一日・雨・そして晴れ


冷たい雨に少しばかり打たれていました。ときどきオッサンは馬鹿なことをします。冬の冷たい雨を感じたくて、顔を上に向けオモテに当たる雨を、舌を出してペロリ、そんな馬鹿なことを好んでします。


公園の片隅の小さな山は、ふだんは子供らが駆け上って、駆け下りて、すべって転んで、とてもにぎやかです。でも北風ビュービューの、雨の公園は、ぼくらだけでしたね。


ヒラリヒラリと白い綿がアチコチときおり舞っています。空の高いところからね、綿あめのような雪が降りてきました。「どうりで寒いや」急に寒さを感じたぼくは、子供のように山を駆け下りました。転びそうになりながらね。相棒は「ダラシネエナ」といった目でぼくを見上げます。


相棒はケンタクン。彼は多少の雨なんかてんで気にならないようです。彼はね、贅沢にも一年中普段着として毛皮を着ています。アタリマエカ。


まぁだから、とにかく人間のぼくらが思うのもなんだけど、ちょっとずるいなぁ・・・と、そんなふうにも感じます。それだけ今日の雨は冷たかったのでしょう。初夏みたいな日が少し前につづいたので余計かな。失敗したのはもうちょっと待っていれば、午後から雨があがったことです。なんとお天道様まで出てきました。


さて彼ケンタクンは、ぼくの一番の相棒です。大親友です。家族でもあります。こんなフウに言うとね、たいていの大人は、ぼくのことを「ガキっぽいなぁ」・・・そんなふうに思うようです。どう思われようとかまいませんがね。


そんなガキでもあるオッサンは、最近冬も好きになりましたよ。ちょっと前までは夏が大好きで、「一年中夏だけでもいいな」なんて思っていたのにね。
ぼくはまいにち車でアチコチ行きます。仕事がアチコチだからです。アチコチでいろいろな人に会います。いろいろな人はいろいろな意見を持っていて、10時のお茶などいただいていると、みなさんそれぞれのご意見を披露してくれたりします。


「あのさぁ、あんたらはどうかわかんないけどね、会社員はつまんないよ。税金はキチンと取られんけどさぁ」

「えと、ぼくらも税金はキチンと納めてますよ」

「もうちっと行政がさぁ、なんつうの、その福利厚生ってやつをさぁ、面倒みてくんないと」


話しが噛み合いませんが、言いたいことはなんとなくわかります。さいきんの特徴は政治や経済のことが、その話題の多くを占めていることです。


「こんどは、とにかく精一杯候補者の目標なり目指すところを掴んで、そのうえで投票をしたらいいですよね」

「そこが問題だ。あのさ、○○候補が日本のリーダーになればさ、きっと」いい社会をつくってくれるよ」

「・・・えと、あの、いい社会って、リーダーひとりの資質で成せるものじゃあない・・・ですよねぇ・・・」

「・・・あんた共産党かい」

「あ、いえ、そういうことではなく、あの、何かに寄りかかるのではなく、自分らで社会をつくる気構えが・・・」

「ふーーん、職人さんでも赤いのがいるんだ」


これ以上お話しているととんでもない方向に会話が進みそうなので、ぼくは腕時計をみながら失礼する旨を伝え、でもってオイトマをいたしました。


運転しながら鏡を見ました。ぼくは健康で、血圧も少し高めで、精神もいつも煮えたぎっています。だから確かにほっぺたは人並み上に赤く輝いていました。「アカかぁ」久しぶりに聞きましたね。「アカ」の意味が共産主義者をしめすならば、ぼくは確かに「アカ」の部分を持っています。


けど一党独裁である中国や北朝鮮の現状を辛らつに批判して、一部アカデミックな場から・・・ちょっと大げさだな。とにかく理由にもならない理由でグループから排除されたりもしています。またアメリカ合衆国の底知れない「活力」に、大いなる期待と羨望もつ自分もいます。だからいわゆる右も左もぼくなのでしょう。


社会の大人達みんなが、世直しの気構えを持って、それぞれの地域社会や組織で活動をしましょう・・・なんていう、そんな夢のような期待を持ってはいませんよ、ただね、盲目的に誰かに頼って、そんでもってそのリーダーの首のすげ替えだけで「いい社会」ができるかもしれない、なんて考えるほど「ガキ」でもないことは確かです。